昭和5年歌舞伎の殿堂木挽座の「掌中の珠」を砕くという脅迫状が興行会社に届き、江戸の狂言作者桜木治助の末裔で、大学で教鞭をとりつつ木挽座に出入りしている桜木次郎が警察とともに注意を払っていたところ、五代目袖崎蘭五郎という知らぬ者のない人気役者が「忠臣蔵」上演中に鳥屋(花道の奥にある出番を待つための小部屋)で死んでいるのが発見された。
好物のどら焼きに盛られていた毒による殺人であった。捜査が遅々として進まない中、怪しげな動きをする新聞記者と、蘭五郎を子供の頃からお守りしていた蘭香も無残な殺され方をされてしまった。一方で、旧態依然の歌舞伎の世界の改革をめざして労働争議を起こそうという動きや、アカ狩りに暗躍する特高など不穏な空気が流れていた。犯人が木挽座内にいるのか?犯行動機は?思いがけない犯人にアッと驚く結末でした。
楽屋での役者や裏方の立ち居振る舞いや上下関係の厳しさなども知ることが出来ました。時代は変わり、今の歌舞伎の世界はどのようなものか好奇心をかきたてられました。
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