博物館のキューレーターの経験を生かして「アンリ・ルソー」や「モネ」、「マティス」など画家の世界を描いてきた著者は、一方で「総理の夫」では政界に入り総理大臣になった妻の夫としての視点から、また「本日はお日柄もよく」ではスピーチライターを主人公とする興味深いジャンルの著書も手掛けています。
本書は諸般の事情から旅行に行かれない依頼者代わって元アイドル丘えりかこと「おかえり」が旅をするという話です。満開の桜を求めて向かった秋田県角館ではどしゃ降りの雨で花見見物どころではなく、次にむかった山奥にある玉肌温泉では大雪にみまわれたりと天気には恵まれない旅でしたが、温かい人情や優しさに触れて、依頼者である真与さん(ALS患者)やその家族を大いに満足させる旅になり、「旅屋」としてやっていこうと決心する物語です。
旅のことばかりではなく弱小プロダクションの経営、スポンサー企業とテレビ局の関係、人気がなくなったアイドルの行く末などさらっと読めるものの、魅力的な人物や逸話もあり楽しめました。
0コメント