旅屋おかえり 原田マハ 博物館のキューレーターの経験を生かして「アンリ・ルソー」や「モネ」、「マティス」など画家の世界を描いてきた著者は、一方で「総理の夫」では政界に入り総理大臣になった妻の夫としての視点から、また「本日はお日柄もよく」ではスピーチライターを主人公とする興味深いジャンルの著書も手掛けています。23May2017現代小説
冬の光 篠田節子 “父の遺体があがった。” から始まったこの物語。父富岡康宏は定年後、老父の介護をして見送ったあと、東北の大震災に巻き込まれ亡くなったと聞かされたかつての恋人笹岡紘子を探しに出掛けた仙台で、多くの死や津波によって破壊された土地、家屋敷を失い避難場所で不自由な生活を強いられている人々を目の当たりにしてボランティア活動に参加し精力的に働いた。その後、特別の決意があったわけではないがある日妻に「四国遍路に行ってくる」と言って車で向かった。その父が無事八十八か所の巡礼の旅を終えた後、帰りのフェリーから行方不明となり、数日後波間に浮いているのが確認されたのだ。24Mar2017現代小説
総理の夫 原田マハ 相馬財閥の御曹司で鳥類学者の相馬日和が新進気鋭の国際政治学者で才色兼備な女性、真砥部凛子と出会ったのはソウマグローバル主宰の「22世紀朝の研鑽会」の場であった。やがて二人は結婚して10年が経ち、凛子は国会議員となり少数野党の党首として議会に席をおいていたが、総選挙の結果長年与党として君臨していた民権党が敗退して連立政権が樹立され、初の女性総理大臣として指名されたのだ。23Jan2017現代小説
だから荒野 桐野夏生 2017年最初に購入し読んだ本が本作でした。11月から年末にかけて何冊か読んだのですが、なかなか面白い作品で出会うことが出来ませんでした。本書は新聞の連載小説でしたが、文庫化されて新年早々購入後一日半で読み終えました。 誕生日を祝うために出掛けた新宿のレストランでの口喧嘩から夫と長男を残したまま席を立ち、家には帰らないと決意し、車で西に向かった森本家の主婦朋美46歳。家を出る前から化粧や服装を批判され、誕生日の主役のはずなのに家から車を運転させられてお酒を飲むこともできず、予約したレストランを自称グルメの夫にはダメ出しされてついに堪忍袋の緒がきれたのです。04Jan2017現代小説
楽園のカンヴァス 原田マハ 今年春の芦屋サロンのゲストは葉室麟さんでしたが、秋のゲストが原田マハさんだと予告されていました。実は彼女の本は未読だったので秋の芦屋サロンに参加するかはともかく一度読んでみようと思い購入しました。28Sep2016現代小説
猫と漱石と悪妻 植松三十里 今年は夏目漱石没後100年にあたり、展覧会の開催や書物が出版されています。本作品は悪妻として有名な境子夫人との馴れ初めや「吾輩は猫である」を書き始めたきっかけとなった猫のこと、普段は子煩悩で朝食のパンにジャムをたっぷりつけて子供たちと笑いあって食べていた漱石が、ロンドン留学から帰国後、些細なことから突然癇癪を起し子供を泣かせたり、庭に投げだしたりと豹変し、妻子が恐怖におののく日々などが描かれています。帰宅後は自室でこもり勉強に勤しむ漱石でしたが、日光の華厳の滝から身を投げた学生が教え子で、自殺の少し前に叱ったことがあったのでそのことではかなり気に病んでいた様子でその後も夜中に意味のなく癇癪を起こし、暴れまわりその行動は目に余るもの...06Sep2016現代小説
娘の味「残るは食欲」 阿川佐和子2016.5.13 次々にあらわれる美味しそうな食べ物の数々に食べたい、買いたい、作ってみたいと思わせる本でした。 阿川家の関西風なすき焼きは関東育ちの夫が好きな食べ方でしたし、山梨の信玄餅はブドウ狩りの帰りに妹が買ってきてくれるお土産の定番でした。キャビアやラクダのつま先はなかなか食べる機会がありませんが、切り干し大根や家庭で作るような普通のハンバーグも出てくるので高級なものばかりのグルメ本ではありません。13May2016現代小説
かばん屋の相続 池井戸潤2016.5.3 表題を始め、銀行や信用金庫に勤務する主人公と融資先との間に起こる事件を扱った6つの短編集。かばん屋の相続10年後のクリスマス手形の行方セールストーク芥のごとく妻の元カレ03May2016現代小説
よみうり読書芦屋サロン ゲスト葉室麟さん2016.4.26 芦屋ルナホールで読売新聞社と谷崎潤一郎記念館主催で春と秋に開催される小説家を迎えての芦屋サロン39回目のゲストは葉室麟さんでした。私が参加している読書会で近年特に人気の小説家なのでとても楽しみにしていました。26Apr2016現代小説
女相続人 ー The Heirees ー2016.1.22 おそらく30数年前にNHKで放送されたアメリカ映画「女相続人」(注)。1949年制作のモノクロでしたが、再度見たいとここ数年探していたのですが、ついに先日10枚組のDVDのセットの中に見つけました。アカデミー賞ベスト100選の中の10枚組で「誰が為に鐘は鳴る」「ハムレット」「黄色いリボン」「地上より永遠に」などの名作とセットでした。22Jan2016現代小説
見上げれば星は天に満ちて 浅田次郎編2015.11.20 森鴎外初め、芥川龍之介、谷崎潤一郎、川端康成等そうそうたる作家の方々の作品を浅田次郎が「心に残る物語」として選んだ13編からなる短編集。 傑作揃いですが、私は「山月記」「補陀落渡海記」が特に気になる作品でした。 中島敦作「山月記」は高校の教科書にもたびたび掲載される漢文調で書かれた中国が舞台の作品。博識があるが、片意地をはり人との交わりを拒む性格から役人の世界で出世が覚束なく詩人になった李徴は、文名がなかなかあげられず再び役人生活にもどるが、かつての元同僚達は高位につき、彼らの指示に従わなければならず自尊心の強い彼は、もんもんとした日々を過ごし、ついに旅の途中発狂し虎に姿を変えた。一年後少ない友人の一人が任地へ...20Nov2015現代小説
活動寫眞の女 浅田次郎 浅田次郎が「鉄道員」で直木賞受賞後に執筆した初の恋愛小説。時は昭和44年東大紛争で入学試験が中止となり、京都大学の学生となった三谷。東京出身の彼は京都の町にも大学にもなじめず、うつうつとしていたある日、入った映画館で同じく京都大学生の清家と知り合う。ふたりの共通点は映画好きなことだった。やがて清家の知り合いのつてで映画の撮影所にエキストラとして、三谷と同じ下宿に住む結城早苗を含む三人でアルバイトを始めた。そこで三人は美人女優が撮影現場に頻繁に現われ、そのはかなげな美しさに魅了されるが実は彼女は戦前に自殺した伏見夕霞という女優のゆうれいだったのだ。清家がこの女優と恋に落ちるというロマンチックでホラーな青春を描いており、時代物、中国が...27Oct2015現代小説