殿様の通信簿        磯田道史

2016.2.11

 元禄時代の243人の大名達の人物評価が記された「土芥寇讎記(どかいこうしゅうき)」を主な参考資料にして殿様とはどのような人々であったのか、7人の人物を取り上げてその人となりや生活ぶりが書かれた作品。「武士の家計簿」や「無私の日本人」1編目「穀田屋十三郎」が映画化され、テレビや新聞でもお馴染みな作者ですが、本作も期待を裏切らない面白さでした。一番目に取り上げられた「水戸光圀」はテレビの「水戸黄門」として有名ですが、家来にも領民にも憐み深く、気前のいい殿様だと書かれており、文武両道をよく学び頭のよい人物だと評されている一方、品行方正とはいえず悪所(遊郭)に通い遊女を買って、酒宴に興じているとも噂されていたそうです。光圀の時代まではお忍びが辛うじて出来たようで、実際遊郭に通ったものの、城の中ではなかなか会うことが難しい詩文・書画・管弦の達人などに会う目的もおおいにあったようです。その他「忠臣蔵」で有名な浅野内匠頭は知恵があり、利発であったが並外れた女好きであったとか、岡山の二代目藩主で日本三大名園の一つ「岡山後楽園」を作った池田綱政は生まれつきの愚か者で分別がなく、無類の女好きだったとも「土芥寇讎記(どかいこうしゅうき)」に書かれていたそうです。一括りに殿様といっても「名君」から「馬鹿殿」と言われた人まで千差万別でそこに仕えた下々の苦労が偲ばれます。

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