あきんど(上、下)絹屋半兵衛 幸田真音 京都で流行していた陶磁器の製造販売を自ら立ち上げようと思い立った絹屋半兵衛は彦根では有名な古着商でした。しかし「やきもの」に関する知識はなく、あるのは意気込みだけでした。窯を作る場所やその製作方法、職人集め、土の選定や資金源など数々の困難を乗り越え豪商藤野家に奉公していた妻留津の助言や知恵もいかしながら「湖東焼」として製作することができました。やがて職人たちの奮闘もあり満足のいく作品を作りあげることが出来てきた矢先・・・。23Aug2017時代小説
家康の子 植松三十里 徳川家康の次男として生まれた秀康が15も歳のはなれた長男信康の計らいで父家康に初めて会ったのは、於義丸と呼ばれていた3歳の時だった。やがて織田信長亡き後着々と権力を伸ばしつつあった秀吉の養子(実質的には人質)として大阪の城で暮らすことになり、時に遠く離れて暮らす母お万を思い、父家康の自分への冷酷さを思う秀康であった。19Nov2016時代小説
赤絵そうめん(とびきり屋見立て帖) 山本兼一2016.6.23「利休にたずねよ」や「命もいらず名もいらず」「花鳥の夢」「火天の城」等数々の名作を生み出し、惜しくも2014年に亡くなった山本兼一の道具屋を舞台にした短編集。とびきり屋見立て帖のシリーズ第3弾。・赤絵そうめん・しょんべん吉右衛門・からこ夢幻・笑う髑髏・うつろ花・虹の橋23Jun2016時代小説
赤猫異聞 浅田次郎2016.3.27 明治元年暮れの火事の際の出来事に関して牢屋の同心と3人の犯罪者の独白を綴った小説。「赤猫」とは放火犯の俗称で総じて火事をさすようになり、伝馬町牢屋敷では火の手が迫った際の「解き放ち」をそう呼んでいました。いかなる極悪人でも火事で焼き殺すことは出来ず、鎮火の後は日時、場所を決めて必ず集まるようにと厳命し解き放たれました。独白者の3人は重罪を犯した犯罪者ゆえに、一度は解き放たずに殺してしまおうとの意見も出たのですが、牢屋鍵役一人丸山小兵衛の口添えで3人とも必ず集合場所に帰ることを条件に解き放たれたのでした。3人の犯罪者とは今は政府のお雇い外国人の妻となっているスウェイニイ・コンノウトこと白魚お仙という100人の夜鷹の...27Mar2016時代小説
老いの入舞い 麹町常楽庵月並の記 松井今朝子2016.3.18 「老いの入舞い」を含む4つの短編集。大奥に長年勤め、今は隠居して「常楽庵」で若い町人の娘達に武家風の行儀や作法を教え、悠々自適の日々を送る志乃と最近定町廻りの同心に昇格した間宮仁八郎が常楽庵にまつわって起こる事件や謎に迫るミステリー。18Mar2016時代小説
殿様の通信簿 磯田道史2016.2.11 元禄時代の243人の大名達の人物評価が記された「土芥寇讎記(どかいこうしゅうき)」を主な参考資料にして殿様とはどのような人々であったのか、7人の人物を取り上げてその人となりや生活ぶりが書かれた作品。「武士の家計簿」や「無私の日本人」1編目「穀田屋十三郎」が映画化され、テレビや新聞でもお馴染みな作者ですが、本作も期待を裏切らない面白さでした。一番目に取り上げられた「水戸光圀」はテレビの「水戸黄門」として有名ですが、家来にも領民にも憐み深く、気前のいい殿様だと書かれており、文武両道をよく学び頭のよい人物だと評されている一方、品行方正とはいえず悪所(遊郭)に通い遊女を買って、酒宴に興じているとも噂されていたそうです。光...11Feb2016時代小説
一路(上・下) 浅田次郎2016.1.3 失火により故郷の家と共に父を失い、19歳にして参勤道中御供頭という家督を相続した小野寺一路。文武共に優れた秀才であったが、江戸育ちで父から御供頭という役目について何一つ教えを受けておらず、突然のことにとまどうばかりであった。失火というのは大罪であるため、この家督相続も仮のもので無事に参勤道中を済ませなければ家名断絶という極めて困難な状況に追い込まれた一路であったが、実家の焼け跡から見つかった文箱の中から出てきた遥かかなたの先祖が書き記した参勤道中心得とも言える「行軍録」は大変参考になった。一路はこれを手本に御殿様蒔坂左京大夫様とともに50名の行列は師走の3日に江戸に向けて発駕したのであった。冬の中山道を行く一行には...03Jan2016時代小説
城塞 司馬遼太郎2015.11.25 徳川家康が「豊臣家」を滅ぼすべく策謀をめぐらし、大阪方と戦った冬の陣、夏の陣を描いた歴史ドラマ。今年のゆるキャラグランプリに「出世大名家康くん」が一位に選出されましたが、およそこの可愛いキャラとは大違いで、天下を取ったものの目の上のこぶだった秀頼とその巨城大阪城をなきものにしようと謀略の限りを尽くす家康。関ヶ原の戦いで大阪方だったため牢人に身を落としていた真田幸村、後藤又兵衛なども呼び集められ対決するが、天守閣に大砲を撃ち込まれるに及んで秀頼の母、淀殿は和議を結ぶ。しかし、外濠ばかりか内濠までも埋められ、大阪城は裸同然の姿になってしまった。再び、戦いの火ぶたは切られ、数十万の東軍に勇猛果敢に挑んだもののついに白...24Nov2015時代小説
幻の声 他 宇江佐真理 宇江佐真理さんが66歳という若さで亡くなられました。江戸の下町人情やミステリー、「雷桜」などの青春純愛小説、生まれ育った北海道が舞台の小説など数々の作品を残されました。テレビなど動く映像では拝見したことがなかったのですが、写真やエッセイなどから拝察すると明るくとっても朗らかで頼りになるお母さんというイメージでした。「泣きの銀次」、「髪結い伊三次」シリーズの他にも「おぅねぇすてぃ」「卵のふわふわ」「富子すきすき」など題名に引かれて読んだ作品もありました。ところで「おぅねぇすてぃ」はビリー・ジョエルの「Honesty」、「髪結い伊三次」シリーズの「黒く塗れ」はローリング・ストーンズの「Paint it black」、「雨を見たか」はC...10Nov2015時代小説
落日の宴 勘定奉行川路聖謨 吉村 昭ペリーのアメリカ艦隊に続いて強く開国を迫って鎖国下の日本にやってきたロシア艦隊のプチャーチンを相手に長崎で、そして下田で粘り強く勘定奉行として交渉にあたった川路聖謨(かわじとしあきら)の生涯を綴った作品。江戸の幕府上層部からの開国はしないとの下命とロシア側代表プチャーチンのロシアという大国を背景にしての圧力の狭間で奮闘する川路。江戸から長崎への長旅では行く先々の各藩での家老の出迎え、藩主からの豪華な食事の提供など幕府の威光の大きさが感じられるものだった。自己に厳しい川路は好きな酒を断ち、手ごわいロシア相手に苦闘する。吉村昭がこれまで書いた主人公の中で最も心動かされた人物と評しています。幕末の慌ただしい動き(安政の大獄、桜田門外の変)...02Oct2015時代小説
一命 滝口康彦 好きな作家の一人宇江佐真理さんのエッセイ「笑顔千両」で紹介されていた映画切腹(近年一命という題名で再映画化)の原作滝口康彦の「異聞浪人記」を始め、武士の世界の悲哀を描いた6作品を読む。「異聞浪人記は」大名屋敷に出向いては実際そのつもりはないのに玄関先で切腹すると言って、相手の情に訴えてうまくいけば召しかかえられたり、なにがしかの金子をいただくという悪習が浪人達の間でその頃流行っていた。浪人になり病苦の妻子をかかえ貧しさゆえに井伊家の玄関先にたった娘婿は、はからずも本当に切腹しなければならずその死に様はあまりにも無残であった。その恨みをはらそうと義父である津雲半四郎がとった行動とはスカッとした敵討ちではなかったけれど少し溜飲が下がっ...27Sep2015時代小説