かばん屋の相続       池井戸潤

2016.5.3

 表題を始め、銀行や信用金庫に勤務する主人公と融資先との間に起こる事件を扱った6つの短編集。

  • かばん屋の相続
  • 10年後のクリスマス
  • 手形の行方
  • セールストーク
  • 芥のごとく
  • 妻の元カレ

 「かばん屋の相続」は京都の有名帆布かばん店で実際にあった相続問題を下敷きにしているが、信用金庫に努める主人公の眼を通して、事の顛末を描いている作品。

 銀行員で家業とはまったく関わりのなかった兄が父親の死後、ある日、唐突に相続は長男にという遺言書を持ち出して今まで家業のかばん作りに専念していた弟を追い出し、店の実権を握ったものの・・・。


 池井戸潤お得意の倍返しではないけれど理不尽な兄を懲らしめるという胸のすく展開。


 業績が悪く融資の稟議書が通らず、倒産した会社の社長を、10年後にデパートの有名ブランド店から数人の販売員に見送られ出てきた姿を見て疑念を抱き追跡してみると・・・「10年後のクリスマス」


 クセがあり、ワルを気取っていたものの大型融資案件をまとめるなど実績を上げていた銀行員が一千万円の手形を扮した「手形の行方」


 その他「セールストーク」「芥のごとく」「妻の元カレ」など、銀行内部の人間関係や中小企業との融資をめぐるトラブルなどを描いたミステリー仕立ての作品。



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