だから荒野         桐野夏生

 2017年最初に購入し読んだ本が本作でした。11月から年末にかけて何冊か読んだのですが、なかなか面白い作品で出会うことが出来ませんでした。本書は新聞の連載小説でしたが、文庫化されて新年早々購入後一日半で読み終えました。

 誕生日を祝うために出掛けた新宿のレストランでの口喧嘩から夫と長男を残したまま席を立ち、家には帰らないと決意し、車で西に向かった森本家の主婦朋美46歳。家を出る前から化粧や服装を批判され、誕生日の主役のはずなのに家から車を運転させられてお酒を飲むこともできず、予約したレストランを自称グルメの夫にはダメ出しされてついに堪忍袋の緒がきれたのです。

 昔の恋人が住んでいるはずの長崎をサービスエリアで数か所休みながら目指しますが、トラックの運転手にコーヒーをごちそうされ喜んでいたら下心があることがわかりショックを受けたり、彼氏に置き去りにされた若い女性を乗せたところ騙されて車を乗り逃げされ、バッグ一つで今度は朋美が置き去りにされたり。散々な目にあいながらたまたま長崎に帰るという老人を乗せた若者の運転する車に同乗させてもらい、老人の家にしばらくお世話になります。それからも高校生でゲームばかりしている次男が家出同然で朋美を頼ってきたり、大学院生だと称し老人の世話をしていた若者に老人がお金を使い込まれたり次々と問題が発生します。

 仕事熱心だが少しも家族に向き合おうとしない夫。リア充な大学生活を満喫しており、彼女の家に入り浸る長男。勉強に身が入らず暇さえあればゲームばかりしている次男。子供たちが小さかったころ好き嫌いが激しく食べられるものが少なかったという理由で満足に食事を作らなくなった朋美。昔は一つにまとまっていた家族は子供たちが成長するにつれてそれぞれが自分の都合に合わせバラバラになり、お互いに思いやりがなくなった森本家。主婦として身につまされるところもあり一気に読ませる作品でした。

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