落日の宴 勘定奉行川路聖謨   吉村 昭

ペリーのアメリカ艦隊に続いて強く開国を迫って鎖国下の日本にやってきたロシア艦隊のプチャーチンを相手に長崎で、そして下田で粘り強く勘定奉行として交渉にあたった川路聖謨(かわじとしあきら)の生涯を綴った作品。江戸の幕府上層部からの開国はしないとの下命とロシア側代表プチャーチンのロシアという大国を背景にしての圧力の狭間で奮闘する川路。江戸から長崎への長旅では行く先々の各藩での家老の出迎え、藩主からの豪華な食事の提供など幕府の威光の大きさが感じられるものだった。自己に厳しい川路は好きな酒を断ち、手ごわいロシア相手に苦闘する。吉村昭がこれまで書いた主人公の中で最も心動かされた人物と評しています。幕末の慌ただしい動き(安政の大獄、桜田門外の変)なども相まって紆余曲折のあった川路の人生。知らなかったもう一つの開国。楽しめました。

0コメント

  • 1000 / 1000