老いの入舞い 麹町常楽庵月並の記     松井今朝子

2016.3.18

 「老いの入舞い」を含む4つの短編集。大奥に長年勤め、今は隠居して「常楽庵」で若い町人の娘達に武家風の行儀や作法を教え、悠々自適の日々を送る志乃と最近定町廻りの同心に昇格した間宮仁八郎が常楽庵にまつわって起こる事件や謎に迫るミステリー。

 大奥で数々の経験をし、好奇心も旺盛な元「滝山」こと志乃が勘や知恵を働かせて事件に迫る中、24歳でまだまだ未熟で事件の確信になかなか届かず、遅れをとる間宮仁八郎。この二人に志乃に仕える女中2人。近所に住む将軍家の刀剣で試し斬りをする御試御用を代々勤める山田淺右衛門、仁八郎の手下の文六、源蔵なども絡んで次々に起きる誘拐、火つけ、殺人、大名家に関係する相対死の謎を解いていく。「入舞い」というのは舞い手が退場する寸前にもう一度舞台の真ん中で華やかに舞って見せることだそうで、4番目の話「老いの入舞い」は志乃が事件の発覚を隠すべく常楽庵に押し寄せた大名家の武士達を相手に薙刀で派手な立ち回りをして退散させ、大奥の大先輩であり、今は志乃と同じく隠居の身ではあるが幕府の重鎮にも顔が利く願誠院の力も借りて江戸詰の悪家老の悪事を暴くというエピソードである。常楽庵シリーズ今後も続くことを願います。

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