赤猫異聞     浅田次郎

2016.3.27

 明治元年暮れの火事の際の出来事に関して牢屋の同心と3人の犯罪者の独白を綴った小説。「赤猫」とは放火犯の俗称で総じて火事をさすようになり、伝馬町牢屋敷では火の手が迫った際の「解き放ち」をそう呼んでいました。いかなる極悪人でも火事で焼き殺すことは出来ず、鎮火の後は日時、場所を決めて必ず集まるようにと厳命し解き放たれました。独白者の3人は重罪を犯した犯罪者ゆえに、一度は解き放たずに殺してしまおうとの意見も出たのですが、牢屋鍵役一人丸山小兵衛の口添えで3人とも必ず集合場所に帰ることを条件に解き放たれたのでした。3人の犯罪者とは今は政府のお雇い外国人の妻となっているスウェイニイ・コンノウトこと白魚お仙という100人の夜鷹の元締めだった美女。元侠客で賭場開帳の罪をひとりで背負い、死罪が決まっていたが解放後は高島善右衛門と称し、高島交易商会社長となっていた繁松。そしてあと一人は旗本の息子で官軍憎しとばかりに官兵八人を斬った岩瀬七之丞、今は陸軍工兵少佐で陸軍士官学校の教官となり、フランスへの留学経験もある岩瀬忠男。解き放たれた3人は自分を裏切った者への復讐や官軍への恨みからまた官兵の殺害をもくろんであてこんだ場所へ出かけるが、すでに憎き相手はすべて何者かの手によって殺されていたのでした。はたして誰が?なぜ?3人に代わって殺人(成敗)を犯したのか?期待を裏切らない面白い作品でした。

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