赤絵そうめん(とびきり屋見立て帖) 山本兼一

2016.6.23

「利休にたずねよ」や「命もいらず名もいらず」「花鳥の夢」「火天の城」等数々の名作を生み出し、惜しくも2014年に亡くなった山本兼一の道具屋を舞台にした短編集。とびきり屋見立て帖のシリーズ第3弾。

・赤絵そうめん

・しょんべん吉右衛門

・からこ夢幻

・笑う髑髏

・うつろ花

・虹の橋

 ゆずと真之介夫婦は京の三条通りに店を構える道具屋で、久しぶりにやってきた坂本龍馬が飾り棚の「赤絵」を見て、「知り合いに赤絵の鉢を探すよう頼まれた丁度良い」とばかり持参することになった。ところが、しばらくして「いかんぜかったよ」と言って持ち帰ってきた。なんでも廻船問屋の孫娘が病にかかり食欲がないが、赤いきれいな鉢にはいったそうめんなら食べるというので探していたのだが、鉢に描かれた絵が怖いといって気に入らなかったという。そのころ銅屋(あかがねや)という両替商から赤絵50鉢をまとめて売る話が持ち込まれ、その中には廻船問屋の孫娘が気に入りそうな鉢もあるがいかんせんまとめてとなると千両は下らないだろうという話になりゆずと真之介夫婦は知恵をしぼることになる「赤絵そうめん」他「しょんべん吉右衛門」「からこ夢幻」「笑う髑髏」「うつろ花」「虹の橋」5編。

 ゆずは京の老舗茶道具商「からふね屋」の娘で茶道家元の若宗匠のもと許嫁だっただけに幼いころからいろいろな稽古事を仕込まれていたおり茶道具はもとより、茶室の設えなどにも詳しく彼女の助言で話がよい方向に進んでいく。時は幕末で、坂本龍馬や新選組の芹沢鴨、近藤勇そして桂小五郎、三条実美などが登場し、話に花を添えている。

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