楽園のカンヴァス        原田マハ

 今年春の芦屋サロンのゲストは葉室麟さんでしたが、秋のゲストが原田マハさんだと予告されていました。実は彼女の本は未読だったので秋の芦屋サロンに参加するかはともかく一度読んでみようと思い購入しました。

 美術館の設立準備室からニューヨークの近代美術館(MoMa)に派遣され、その後フリーのキューレーター(博物館や美術館など展覧会の企画、運営、管理を担う専門職)等の経歴を持つ作者が書いた美術史に関するミステリーです。今はある美術館の監視員をしている早川織絵は高校生の娘と実母との三人暮らしのシングルマザーですが、その昔はアンリ・ルソーの新進気鋭の研究者としてソルボンヌの美術史科で研究職にあった女性です。1983年に伝説のコレクターといわれるコンノート・バイラー氏の代理人からの招待状により、彼女とMoMaのアシスタントキューレーター ティム・ブラウンがスイスのバーゼルに呼び寄せられます。ルソー作の「夢」はロックフェラー財団から寄贈され、現在MoMaに展示されているが、それに似た「夢を見た」という作品がルソーにはあり、近代美術史の世界的権威が真作だと鑑定しているこの作品の真贋を二人に7日間で鑑定してほしいという依頼でした。

 ルソーは「税関史ルソー」とか「日曜画家」などと言われ一般的な評価はあまり高くない画家でしたが、呼び寄せられた二人はルソーを専門に研究しており、その資格は十分だとして招待されたのです。「夢」及び「夢を見た」のモデル ヤドヴィカ、ヤドヴィカの夫、ピカソ、有名なオークション会社、インターポールの謎の女性刑事、バイラー氏の代理人コンツ等多士済々の人々によりこの謎の作品「夢を見た」をめぐって話は展開していきます。各所に伏線が張られており、終盤でその謎が解明されていくのですが、殺人事件とはまた違った興味深いミステリーでした。

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